切り札

切り札ってさ、使わないからありがたみがあるんで、

使っちゃったらもうそれまでなのよ。

後は何がどうなろうと、指をくわえて見てるしかないの。

でもね、

たまにはわざと使って、相手に任せるのも

ひょっとしたらありかもしれないね。

俺、まぐろですから

前向いて泳いでないと死んじゃうんだよ

いつも新しい何かに出会ってないとつまらない

忙しそうだねとか言われるけどさ

楽しいからきついなんて思ってないよ

たまには後ろを振り返れとか言われるけどさ

振り向いたって 捨てたものと てめえの糞が落ちてるだけじゃん

糞まみれになってるくらいなら

俺はヒイヒイ言いながらでも先へ行くよ

必要悪

嫌いになるのは理由があるけど

好きになるのは理由がない

だからある日突然恋はやってくる

まるで災難か急病のようなもの

だけどそれがなけりゃ生きていく気がしないから

困ったもんだね

その白い肌に

その白い肌に触れることはもうできない

そのなめらかな髪をなでることはもうできない

その黒い瞳に見つめられて胸を躍らせた日は二度と来ない

全てリセットして出会ったあの日に戻れたらいいのに

否、せめてその声をもう一度聞くことができたなら

今はそれすらも叶わない

こんなに近くにいるのに

自覚のない男

周りからおっさん呼ばわりされるけどさぁ、

俺、おっさんになった覚えがないんだけど。

俺は俺でしかないと自分で思ってるんだが。

そりゃ歳なりに見た目も変化してるし、

歳なりに小手先でのごまかし方は覚えたさ。

でも、そこいらの若いのと俺ってそんなに違うか？

どこが違うのか言ってみろって。

ああ、他のおっさんの事は知らんよ。

如何にも老けて、何か面倒なもん背負ってそうな連中と一緒にするなよ。

俺はあんな風に守りになんか意地でも入ってやんねえから。

一生前向いて突っ走って、そのまま死んでやる。